平成17年6月25日

『毎日新聞』名誉職員
『羅府新報』寄稿者  田 原 護 立 殿

公 開 質 問 状

拝啓 時下ますますご清祥のことと拝察し、お慶び申し上げます。
 2005年6月16日付『羅府新報』の「日独の六十年」と題された貴殿の署名原稿(「磁針」)を読んで驚きました。小生が『羅府新報』長島編集長にお送りした、2005年6月7日付で掲載された、入江健二医師の投稿に対する反論の論点に対して、『羅府新報』は小生の原稿をボツにしておきながら、貴殿が小生の論点に反論されていたからです。
 貴殿が『羅府新報』にどの程度影響を与え得る人物かどうかは知りませんが、『毎日新聞』出身で、第一面のコラムを書くということは、貴殿の意見が、『羅府新報』を代表するものと判断しました。そのような貴殿のご発言が、当地日系社会に一定の影響力があることを憂慮しております。尤もこれは貴殿一人、『羅府新報』一社の問題ではありません。このまま反日メディアの現状を放置することは、日系人と日本人の人権を蹂躙することであると考え、私たちはすぐに行動に移しました。貴殿の原稿は、複数の歴史研究団体にも、情報として提供し、すでに、批判原稿をロサンゼルスにおける反日メディアを批判するブログで公表しております。
 ロサンゼルスにおける反日言論は、今に始まったことではないと聞きますが、日系人と日本人の将来と人権を守るため、小生はここに、貴殿に対して公開質問状をお送りするのやむを得ずなきにいたりました。貴殿からの真摯なご回答を期待します。この質問状は、すでにウェブサイト上に公開してあります。
 万一、貴殿が歴史的事実をご存じないのであれば、各項目につき、その旨ご回答のうえ、日系人と日本人に対して、紙面を通じて謝罪をしてください。またそれが無理ならば、小生が責任をもって、ウェブ上で公開します。無知はだれにでもあることです。
 もしも事実に基づく反論がおありならば、その旨詳細にお知らせください。今度こそ、正々堂々と、徹底的に論争しましょう。それを公開の場で、多くの方に読んでいただきましょう。
 小生は、大学、大学院を通じて、歴史と歴史教育を研究してまいりました。現在、教壇から歴史を説いております。また、心ある仲間とともに、貴殿がお持ちのような、歪められた情報に基づいて行われている日本の歴史教育を、事実に基づいて教えるように正常化する運動を行っております。在米日本人、日系人社会にも、自らの人権問題として歴史を考える、啓蒙活動を行おうと考えていた矢先、この記事に出くわしました。どうか、速やかにご回答くださいますようにお願いいたします。貴殿からのご回答は、そのままウェブサイトに載せ、研究団体等にも報告致します。
 取り急ぎ用件のみにて失礼いたします。
敬 具

自由主義史観研究会北米支部
赤 野 達 哉

―記―


質問番号 掲載時の段落 本文と質問(論点の整理)
第1段落 本文  「戦後六十年の八月十五日を目前に、小泉首相の靖国参拝問題などを含め軍国日本の総括が問われている。」
質問   「戦後六十年記念」で誰にそんなことが問われているのでしょうか。中韓が国民の不満を日本に向けさて、金よこせと、いつものようにいちゃもんをつけてくることを、貴殿は「総括を問われている」と言うのでしょうか。貴殿が入江氏同様、祖国よりも中韓が大切な人だということが、透けて見えます。貴殿の言われる「軍国日本」とはいったい何のことでしょうか。具体的にお答え下さい。
 また、貴殿は勝手に忘れているようですが、靖国神社参拝については、中曽根内閣のときまでは、何も言っていなかったのです。中曽根氏の回顧録によれば、中曽根氏が参拝をやめたのは、民主化に理解があった胡耀邦総書記が、自らの地位を守るために頼んだからだということですが、若しもそうだとしたら、胡氏亡き今、誰に遠慮をする必要があるのでしょうか。ましてや、靖国神社は無名戦士の墓。国家のために尊い命を捧げられた英霊に、内閣総理大臣がお参りしないで、誰がするのでしょう。貴殿の靖国神社に対する見解を、明白にお答えください。
第2段落 本文  「戦争の総括はこれまでも散々に論議されてきたが、今問われているのは「戦後責任」という平和になってからの日本の行動だ。様は、軍国日本当時の「国家行為」に対して、どこまで真摯(しんし)に反省し、それを具体的な行動に結び付けてきたかという評価だ。」
質問  本当にそうでしょうか。「戦後責任」という言葉は、中韓と貴殿のような、左翼による造語でしょう。日本の責任は、平和条約締結により終わっています。それは国際法であり、双方が守るのが義務であるにもかかわらず、守っていないのは、中韓の方なのに、なぜ貴殿は彼らを諌めないのでしょうか。それとも、入江氏のように、貴殿も国際法を無視して個人賠償せよと言いたいのでしょうか。そうでないとするなら、貴殿がいう具体的な行動とは何でしょう。後を読んでもわかりません。貴殿の言う「戦後責任」と、「具体的な行動」の意味するところを、明白にお示しください。
第3段落 本文  「その評価は常にドイツと比較される。ナチスによるユダヤ人大量虐殺を中心とするドイツの「国家行為」の責任を、少なくとも旧西独は明確に引継ぎ、民主国家として生まれ変わりながら、その罪を背負い具体的な贖罪(しょくざい)・反省行動を六十年間続けてきた。」 
質問   日本とドイツを比較するのは「知性が低い」(西尾幹二氏の言葉)と喝破されてからもう10年になるのではないですか。それなのに、まだこんなことを書ける「ジャーナリスト」がいるのは、日系社会の悲劇です。ドイツは「国家」としては、一度も謝罪したことはありません。左翼がよく日本と対比するのに使う、ヴァイツゼッカーの謝罪演説では、「国や国民に罪はない」と、はっきり言っているのです。ナチスの行為に対する贖罪と謝罪は、国家と国民を、不当な追及や賠償請求から守るためのものであることは明白なのです。貴殿はどういう点で、日本とドイツを比較しているのでしょうか。また、「国家行為」とは何を意味しているのでしょうか。明白にお答え下さい。

第4段落 本文  「冷戦終結で併合された旧東独では反省もほとんどなく、むしろ旧東独国民の多くが「われわれは戦後のソ連共産独裁の被害者だ」との感性の方が強いとされる。それでも、旧西独が東を併合したこともあり、ドイツ国家全体として世界中の人々の目に見える形で責任を背負い行動を続けた。」
質問  この文は意味不明です。多分貴殿は、日本国内に被害者意識を持つ人がいても、それを無視して中韓に対する罪を背負えとでも言いたいのでしょう。しかし、国際社会もドイツ政府も、戦争犯罪とナチスの罪を峻別しています。それができないのは、「知性の低い」輩だけです。
 しかし、東ドイツのみならず、西ドイツがソ連の犠牲になったことを貴殿は無視するのでしょうか。ソ連に占領されたベルリンで、口舌に尽くしがたい、ソ連軍の行為があったことを、貴殿はご存じないのでしょうか。それとも、相変わらずソ連は地上の楽園だったとでも思っているのでしょうか。もしも、行為に対する国家責任があると貴殿が抗弁するなら、それは、チェチェン人の伝統のように、世代を超えた復習の連鎖が広がるのです。繰り返しますが、ドイツはナチスの責任だけを負い、あとは自ら免罪しています。ドイツ政府の免罪行為を、貴殿はどのように評価されますか。明白にお答え下さい。
第5段落 本文  「日本の六十年との差は歴然だ。日本が何もしなかったということではない。日本経済の復興、発展とともに中国や韓国、東南アジア諸国に膨大な支援を続けた。だが、世界や当該国の人々に「贖罪行為」として印象付けられることはなかった。」
質問  貴殿はここで、巧みにアリバイを作ったようですね。入江氏のように、日本がはした金を渡して、何もしなかったかのようなことは書きません。それは、戦後復興を支えてきた、年配の方々の反発を買うでしょうから。しかし、贖罪行為として印象付けられなかったことは、日本政府の責任なのでしょうか。中国に6兆円以上の(入江氏は3兆円とこまかしていましたが)ODAを垂れ流し、増長させたことは、確かに日本政府の責任でしょうが、日本から貢いでもらいながら、それに対する感謝すらしなかった、中国の責任はどうなるのでしょうか。賠償は条約で解決。しかし、実質的にはODAでというのが、先人に知恵だったのです。しかし貴殿は、贖罪行為としてそれを行うべきだったというのでしょうか。最近の反日暴動の際に、欧米のマスコミでは、「日本は既に謝罪している。中国は何をさらに要求しているのか」という論調が見られましたが、貴殿は「ジャーナリスト」でありながら、そういうことは都合よく無視されるのですね。貴殿のいう「贖罪行為」とは何ですか。明白にお答え下さい。 
第6段落 本文  「なぜなのか。答え(ママ)は明白だ。戦後の日本は国際政治の舞台で常に米国盲従を決め込み、政治的二流国(佐藤栄作元首相)であることを選択し、明確な政治メッセージを世に送り出すことを忌避してきたからだ。」
質問  本当に明確な政治メッセージを、日本は忌避してきたのでしょうか。イギリスの『エコノミスト』のカウントが正しければ、日本政府の公式謝罪は、今回の小泉首相の謝罪で18回目になります。その都度、真摯に謝罪し、政治的メッセージとしてきたではないでしょうか。中韓は、日本の政治家が、時々歴史の真実に基づく発言をしたとき、「妄言だ。あの謝罪はなんだったのか」と、青筋立てて怒りますが、日本には言論の自由があるのです。本当は、国家間の問題で、謝罪行為は、無用な賠償問題を引き起こすので、条約で手打ちをするというのが、常識なのですが、日本政府は誠実ですから、迷惑をかけたことに謝罪してきたのです。しかし、歴史の真実を歪めることは、謝罪にはなりません。貴殿は、何を持って明確な政治メッセージとするのでしょうか。明白にお答え下さい。また、佐藤首相が「政治的二流国」という言葉を、いつ、どのような文脈で発言したのでしょうか。そのデータをお示し下さい。
第7段落 本文  「フランスなど陸続きの隣人に囲まれたドイツは、政治的メッセージを最優先させることでしか、祖国再建ができなかったという地政学的環境の違いもある。何より、ハリウッドがさまざまな作品で戦後ドイツを発信したのに対し、戦後日本の発信はフジヤマ・ゲイシャの域を出なかった。日本政府がドイツの「戦後責任」に追いつくにはあと六十年必要か?(田原)」
質問  貴殿のような方から、「地政学的環境」などという言葉を聞けるとは思いませんでした。地政学から言えば、日本を仮想敵国としている中韓、そして北朝鮮、さらにはロシアがいる以上、アメリカに日本が、追随することは、地政学的に見て、正しいのではないですか。
 しかし、この文は日本語としての体をなしていないので、貴殿が何が言いたいのかわかりかねます。「フランスなど陸続きの隣人に囲まれたドイツは、政治的メッセージを最優先させることでしか、祖国再建ができなかったという地政学的環境の違いもある」のであれば、日本は、メッセージを最優先しなくてもかまわないということになるでしょう。それなのに貴殿は、その続きの文で「何より、ハリウッドがさまざまな作品で戦後ドイツを発信したのに対し、戦後日本の発信はフジヤマ・ゲイシャの域を出なかった」と結局日本を批判しています。この日本語は正しいのですか。恥ずかしくても明白にお答え下さい。
 戦後日本の発信とは、何の発信か、貴殿は書いていませんが、文化のこと、平和国家になったことを言いたいのだと好意的に解釈しておきましょう。しかしそれが、フジヤマ・ゲイシャの域を出なかったというのは、明らかな嘘です。それは、ここロサンゼルスに住んでいる(であろう)貴殿が良く知っているはずです。自動車大国で失踪するトヨタや日産の車、ハリウッドが注目する宮崎駿のアニメ、若者があこがれるSONYやPanasonicの製品も、貴殿にとっては、フジヤマ・ゲイシャだと言うのでしょうか。貴殿の強引な結論は、この文が本来比較できない日本とドイツを比較して、日本を貶めることが目的のプロパガンダだということを、如実に物語っています。貴殿の言う「フジヤマ・ゲイシャ」とは何を意味しているのですか。明白にお答え下さい。
 また、日本がドイツの戦後責任に追いつくとは、いったい何を意味しているのですか。具体的にお答え下さい。

 公開質問は以上です。
 尚、貴殿からのご回答の有無及びその内容は、随時ウェブサイト上に公開し、必要に応じて小生からの反論も行います。あくまでもこれは、貴殿個人との論争ですので、貴殿以外の第三者からのご回答や問い合わせには応じませんので、悪しからずご了承ください。 

自由主義史観研究会北米支部
赤 野 達 哉