今月の英語ビジネス書 "The Life and Times of an American, Andy Grove"
Richard S. Tedlow
Portfolio
$29.95
Seemingly overnight, however, Japanese competitors appeared to have transformed themselves from docile puppies to ferocious pit bulls.
 インテル社の元CEOで、カリスマ経営者のひとりであった、アンディー・グローヴの伝記。著者はハーバード大学経営学部教授で、この分厚い本は注釈が多く、単なる伝記というよりも、研究書の趣もある内容です。
 ハンガリーからアメリカに渡った一移民・アンディーの半生は、インテル社の、というよりも、コンピュータ業界の歴史そのものなのですが、興味を引かれるのは、自分にも他人にも厳しかったアンディの方針。たとえば、自分を含め重役出勤を認めない「遅刻管理リスト」の存在、重役専用の駐車スペースや個室の廃止などの厳しい姿勢は、その頃のアメリカの経営者には珍しい存在でした。CEO就任当時43歳だったアンディー。ある意味で怖いもの知らずだったのかも知れません。
 そんなアンディを恐れさせたのが、1970年代半ばの、日本企業の興隆でした。「子犬がピットブルに変貌した」、「死の谷間を彷徨った」とアンディは表現しています。1960年代には、池田勇人首相がトランンジスタのセールスマンだ」と欧米から揶揄された日本でしたが、その10年後には優秀な製品を武器に、アメリカを攻撃するようになったのです。
 これをきっかけに、アンディとインテル社は主力商品であったメモリーの生産を中止し、マイクロプロセッサの製造を社業の中心にすえるという決断をしました。PC時代がやってくることを見越したアンディーのこの大英断は、インテル社にリストラなどの大きな痛みをも与えましたが、手術そのものが大成功だったことは、皆さんが良くご存知の通りです。
 エンジニア出身のアンディーは、「経営は、工学のように計算通りではないから、難しくもあり、楽しくもある」と述べています。経営者というものは、大会社でも小企業でも、本質的に変わることはないと思います。アンディーの苦悩と決断、そして大成功にあやかりたいものですね。